「なぜオリーブ牛は超高いのか?」
はじめに
和牛シリーズが続きます。今度は和牛の中でもさらに高価とされる「オリーブ牛」と呼ばれる品種についての動画です。オリーブ牛の生みの親、石井正樹氏のインタビューもしっかり入った素晴らしい動画です。
簡易な表現が多く理解が用意なのに、端的に和牛文化を伝える内容は教材としてもすぐれてます。
学習教材の動画
動画
動画の引用元
- Why Olive Wagyu Is So Expensive | So Expensive Food | Insider Business
- 公開日: 2023/02/22
- Business Insiderより
動画の概要
0:00- イントロダクション
これは世界で最も珍しいステーキの一つです。オリーブ和牛として知られ、1ポンド500ドル以上(454グラムで75,000円ほど)の価格がついており、他の高級和牛のカットよりも約60%高価です。オリーブを使った特別な飼料で育てられた和牛で、購入できる最も高価な肉の一つです。
石井正樹氏: 「たとえ今日、牛肉のフルコースを食べたとしても、この脂がとても軽いため、翌日にもまた食べたくなるような牛肉です。
0:37- オリーブ牛誕生以前
オリーブを和牛に与える技術は、実はここ数十年で開発されたものです。このステーキが最初からこんなに高価だったわけではありません。
石井正樹氏: 「以前はこのことを冗談で話していましたが、小豆島の牛が100万円以上の価格で売れたら、お祝いにパーティーを開こうと言っていたんです。今では1頭あたり大体120万円が一般的な価格となりました。」
では、オリーブ和牛は他の和牛と何が違うのでしょうか?そして、なぜこれほど高価なのでしょうか?
1:11- 小豆島とオリーブ
瀬戸内海の小豆島では、太陽が昇り始めています。石井正樹さんはここで半世紀にわたり牛を育ててきました。
石井正樹氏: 「2頭の牛を母校の高校から買いました。高校の卒業証書の代わりに、牛をくださいと頼みました。」
小豆島は、文字通り「小さな豆の島」という意味で、かつては小豆で有名でした。しかし、100年以上前にギリシャからオリーブの木が持ち込まれて以来、日本最古のオリーブ畑のある場所として有名になりました。
1:46- 牛にオリーブを与えるという着想
石井正樹氏: 「オリーブは小豆島の宝です。オリーブを牛に与えるアイデアを始めたのは私です。動物の脂肪と植物のオレイン酸をうまく融合させることができれば、香川県にしかない独自の牛肉を作れるのではないかと思ったのです。」
和牛はすでにその強い霜降りと高いオレイン酸含有量で知られており、これが肉をより柔らかく、風味豊かにしています。正樹さんは、オレイン酸をさらに豊富に含んだ和牛を作り出すことを目指しました。
石井正樹氏: 「オリーブには高いレベルの植物性オレイン酸が含まれています。そこで、私は新鮮なオリーブを持ち帰って牛に与えてみましたが、牛は全く興味を示しませんでした。舌で払いのけて、数日経っても食べませんでした。ある日、91歳の女性が渋柿を剥いて干しているのを見ました。これで渋みが取れるのなら、オリーブも乾燥させれば渋みがなくなるかもしれないと思い、乾燥させて飼料にするというアイデアにたどり着いたのです。」
2:55- オリーブの搾り粕を再利用する
しかし、新鮮なオリーブを使う代わりに、正樹さんはオリーブオイル生産の残りかすであるオリーブ粕に目を向けました。この方法により、小豆島の主要産業の一つから出る廃棄物を再利用することができました。
石井正樹氏: 「オリーブの搾り粕は畑に放置されていて、近くの住民から不快な臭いについての苦情も聞いていました。これを牛に与えて、その排泄物をオリーブ畑に戻せば、循環型農業を実現できるのではないかと考えたのです。」
3:35- オリーブ粕由来の飼料を完成させた
オリーブの搾り粕にはまだ多くのオイルが残っています。これを乾燥させるのは難しく、コストがかかるプロセスで、正樹さんはこれを完成させるのに約6年を費やしました。
石井正樹氏: 「この飼料は非常に高価で、日本で最も高価な飼料です。太陽の下で乾燥させ、朝昼晩の1日3回、ひっくり返す必要があります。オリーブを乾燥させることでキャラメルのような風味が生まれ、牛が喜んで食べる味と香りになります。あの牛たちが以前は見向きもしなかったものを、嬉しそうに食べたときのことは、今でも覚えています。その時の『やった!』という感動は忘れられません。」
4:25- オリーブ牛の定義
牛が出荷される2ヶ月ほど前から、正樹さんは毎日飼料に乾燥したオリーブ粕を混ぜ始めます。
石井正樹氏:「オリーブ牛とは、出荷前の少なくとも2ヶ月間、1日あたり100グラム以上のオリーブ飼料を与えられた牛のことです。とはいえ、たまたま1日あたり250グラムのオリーブを与えられた牛が非常に好評だったことから、その量を基準にしました。今では2ヶ月以上にわたり250グラムを与えています。」
5:05- 石井さんは毎朝牛の様子を見る
毎朝、正樹さんは牛がまだ眠っているうちに状態を確認しに来ます。
石井正樹氏:「私が牛舎に入ると、牛たちは一度こちらを向いてからまた眠りに戻ります。これは牛の状態が良い証拠です。全く反応せず、目を覚まさない場合は、何か問題があるサインです。牛が目を覚ました時の便や尿の様子も観察しています。」
5:35- 飼育期間が長いオリーブ牛
他の和牛品種が通常24〜26ヶ月で出荷されるのに対し、オリーブ和牛は30ヶ月経つまで出荷されません。飼育期間が長く、飼料のコストが高いため、オリーブ和牛は手に入りにくいのです。それでも供給が限られているにもかかわらず、シェフたちの間で特に人気があります。
5:53- インターコンチネンタルホテル大阪・スペシャリティレストランPierreのシェフのコメント
柴原仁崇氏 「肉はしっとりとして柔らかく、非常に調理しやすい牛肉です。このレストランでは、オリーブ牛を看板メニューとして提供しており、前菜からメインディッシュまで幅広く使われています。価格は3万円から3万5千円程度です。しかし、最近ではオリーブ牛の入手が難しくなっています。世界中で人気が高まっているようで、価格も上がっている印象です。」
6:33- 成功への確信
石井正樹氏が最初にオリーブでの実験を始めたとき、彼は和牛の買い手にそのことを秘密にしていました。
石井正樹氏「私だけが牛にオリーブの飼料を与えていたので、そのことは誰にも話さず、市場に牛を出荷していました。取引先の専務がその新鮮な生肉を試食し、初めて『とても美味しくなった』と褒めてくれたんです。それで、この方法が成功するという確信を持ちました。」
7:00- 重なる大打撃を経て
しかし、2010年に宮崎県で発生した口蹄疫が、日本の畜産業に壊滅的な打撃を与えました。地元では病気を抑えることに成功しましたが、被害は大きく、アメリカなどの国々が日本からの牛肉の輸入を停止しました。さらに2011年には東北の震災と津波が日本を襲いました。日本が経済の復興に苦しむ中、石原正樹氏は自身の県の牛肉生産を強化することに目を向けました。
彼は地元のオリーブ農家との連携を推進し、2012年には小豆島の他の農家も石井正樹氏の方法を取り入れてオリーブ飼育牛を育て始めました。わずか1年後には、オリーブ和牛が小豆島や香川県以外の場所にも出荷されるようになりました。
7:54- 規模の拡大へ
現在、小豆島には約2,500頭のオリーブ飼育牛がいます。それでも、鹿児島や宮崎のように、何十年も高品質な和牛の生産が行われている地域と比べると少ないものです。石井正樹氏の農場にはわずか20頭しかいません。
石井正樹氏: 「私たちは牛の頭数を増やそうとしていますが、それは簡単なことではありません。最終的な目標は、3,000頭の牛を飼育することです。」
この目標を達成するために、小豆島の牛農家は地元のオリーブ生産者の協力が必要です。
石井正樹氏: 「これはオリーブ産業にも利益をもたらします。肥料に牛の糞を使うことでオリーブの木はより良く育ち、化学肥料よりも木が元気になると聞いています。私が牛の飼育を始めた理由は、循環型の有機農業をやりたかったからです。決して諦めず、これを成功させ、香川県の特産品にするという決意を持って進めてきました。」
単語・表現
cattle
- 牛、畜牛
- 1:20- 石井正樹氏はここで半世紀にわたり、牛を育てています。
high-school-diploma
- 高校の卒業証書
- 1:30- 高校の卒業証書の代わりに、牛をくださいと頼んだのです。
famed for
- 有名だった
- 1:35- 小豆島(しょうどしま)は、小豆(あずき)の生産地としてかつて有名だった。
oleic acid
- オレイン酸
- 1:55 動物の脂肪と植物のオレイン酸をうまく融合させることができれば、
set out
- 出発する、踏み出す、着手する
- 2:18- 正樹氏は、オレイン酸をさらに豊富に含んだ和牛を作り出すことに着手しました。
astringent persimmons
- astringent: 収斂材(しゅうれんざい); 収斂性の、渋い、(性質が)厳格な
- astringency: n 収斂性、厳しさ、渋み、渋さ
- persimmons: 柿
- 2:38-ある日、91歳の女性が渋柿を剥いて干しているのを見ました。
pomace
- (りんご、酒などを造るためのつぶした)搾りかす
- 2:55-新鮮なオリーブを使う代わりに、オリーブの搾り粕に目を向けました。
residue
- 残り、残余、残留物、かす; 剰余; 積極遺産
- 3:00- オリーブオイルを生産した時の残りかす
waste product
- 廃棄物
- 3:03- そうすることで、小豆島の主要産業の一つから生じる廃棄物をリサイクルすることができました
dropping
- (動物・鳥の)ふん; 滴下; 滴り落ちるもの
- 3:25- 牛たちの糞をオリーブ畑に戻すことができれば、循環型農業を実現できるのではないかと考えたのです。
recycling-oriented agriculture
- 循環型農業
- 8:46ごろにも、recycling-oriented organic farming、循環型有機農業という単語が出てきます。
defecate and urinate
- defecate: 排便する
- urinate: 排尿する
- 5:27-牛が目を覚ました時の排便や尿の様子も観察しています
an outbreak of foot-and-mouth disease
- 口蹄疫の発生
- 7:00-しかし、2010年に宮崎県で発生した口蹄疫が、日本の畜産業に壊滅的な打撃を与えました。
- 口蹄疫は牛や豚などの偶蹄類に感染するウイルス性伝染病で、口や蹄に水疱ができ、感染力が非常に強いです。感染拡大を防ぐため、発生時には厳重な防疫措置が取られます。2010年には宮崎県で大規模な流行が起き、畜産業に大きな被害を与えました。人間への感染は非常にまれです。
manure
- 肥料、こやし
- 8:35- 牛由来の肥料を与えたら、オリーブはものすごくよく育ちます。
chemical fertilizers
- 化学肥料
- 8:37- 化学肥料をやるよりも、良く育つと聞いています。
- vigorous: 活発な、精力的な、良く育つ
specialty
- 専門、専攻; 名産品、特産品; 新案品; 特色、特質; 捺印証書による契約
- 8:57- 香川県の特産品にする
感想
日本語→英語→日本語
この動画だと、話し手の情報との乖離がない英訳がされており、さほど問題はないのですが、コンテンツによっては中々厳しいこともあります。
重箱の隅をつつけば、小豆島の言葉の持つ情報あるいは質感がこの二回の翻訳を通じて、切り落とされてしまうということが、言語学習をしていても非常につらい部分です。同時に他の文化を英語で学んでも、現状の手法だと、表層的な情報しか理解しえないということを否応なく実感させられます。
生産者の情熱が伝わる
生産者の石井正樹氏のインタビューが面白く、彼の「循環型有機農業」を実現させるという情熱の強さと実行力には心を動かされるものがあります。